GCUに配属になったけど、NICUとはまた違うの?

GCUとはどんな事を行うのか疑問に思ったことはありませんか?

私は転職前の病院ではGCUがなかったので、実際に配属になったときに「GCUってなに?」と混乱したことがあります。

GCUの正式名称はGrowing Care Unitといい、回復治療室とも訳されることがあります。

NICU(新生児集中治療室)で治療を終えた赤ちゃんが、家庭に戻るまでの橋渡しとなる場所として、医療的ケアと育児支援の両面が求められています。

この記事を読んで分かること
  • GCUの役割と対象となる赤ちゃん
  • GCU看護師の主な役割と仕事内容
  • GCUとNICUの違い
  • GCU看護師に求められる力とは
  • 実際に働いてみて感じたGCU看護の魅力と大変なこと

この記事では、GCU看護の仕事内容や特徴、必要なスキル、そしてやりがいについて、私の体験を交えながらリアルにご紹介していきます。

GCUに配属になった方などのご参考になればと思います。

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GCUの役割と対象となる赤ちゃん

新生児の足

GCU(Growing Care Unit)は、日本語で「回復治療室」と訳されることもあり、NICUでの治療を終え、病状が安定した新生児が入る病棟です。

医療依存度は低くなっているものの、まだ家庭での生活に移行するには支援が必要な赤ちゃんたちが多く入院しています。

私の現場では、以下のような赤ちゃんがGCUに入院していました

  • 早産でNICU治療後、体重増加を待っている赤ちゃん
  • 哺乳量や呼吸が安定しきっていない新生児
  • 医療的ケア児(在宅酸素、経管栄養など)の退院準備中の赤ちゃん

GCUは、単なるNICUの次ではなく、退院後の生活に向けた調整と準備を行う大切なステージです。

GCU看護師の主な役割と仕事内容

新生児の服

GCU看護師としての主な業務は、以下の3つに大別されます:

新生児の健康管理・成長サポート

体温・呼吸・排泄などのバイタルチェック

成人と同様に必ず毎日行います。特に新生児は自分で不調を伝えることができないので、日々の観察が大切になってきます。

特に出生直後の新生児は体温や呼吸が変動しやすいので、しっかり観察していく必要があります。

また成人と違い血圧測定は循環器疾患があるなど、本当に必要な児のみに行っていました。

哺乳量の観察、体重増加の記録

哺乳量や体重増加の観察は、新生児の体調や成長の様子を見るのに必ず必要です。

出生後数日は一時的に体重が減少しますが、それが生理的なのか病的なのかも観察していく必要があります。

また新生児は自分でご飯を食べることができないので、哺乳量の観察もとても大切になります。

黄疸や皮膚トラブルの管理

生後2日目頃から現れる黄疸は生理的黄疸といい、徐々に改善していきます。しかし中には病的な黄疸もあり、その見極めもとても大切になります。

また新生児は皮膚の防御機能が未熟であり、頻回な排尿や排便があるため、おむつかぶれなどの皮膚トラブルにも発展します。日々のケアの中で、皮膚トラブルの有無を確認する必要があります。

少し赤いかな?って様子をみたら、あっという間に赤くなっていたことがあります。

家族への支援・育児指導

新生児への抱っこや授乳、沐浴などの指導もGCU看護では大切になります。

母乳育児、哺乳瓶を使用しての授乳でも、それぞれ練習が必要になります。特に初産の方であれば、全てが初めてのことであるため、不安も大きくなります。

またGCUの新生児はNGチューブや酸素投与など、退院後も医療的ケアが必要になる場合があります。そのため退院後に家族が全員が協力できるように指導していく必要があります。

出産はゴールではなくスタートです。退院後も安心して過ごせるように支援していくことが必要です。

チーム医療・連携

看護師だけでなく、医師やリハビリ、ソーシャルワーカーとの連携が必要になります。

GCU(Growing Care Unit)における他職種一覧を、役割や関わり方とともに整理しました。看護師と連携することが多い順に並べています。

職種名主な役割看護師との連携ポイント
小児科医・新生児科医診療・治療・退院判断毎日の観察報告、治療計画の確認
保育士発達支援・情緒的安定育児環境の観察、遊びや関わり方の調整
医療ソーシャルワーカー(MSW)家族支援、制度調整、退院支援経済・育児不安の共有、退院後の環境整備
栄養士(管理栄養士)哺乳量・栄養バランスの管理体重増加・ミルク種類の調整
リハビリスタッフ(PT・OTなど)発達の評価と介入姿勢調整・育児中の注意点の助言
地域保健師(市町村)退院後の家庭訪問・支援カンファレンスで家庭環境を共有
訪問看護師退院後の医療的ケア支援ケア内容の引き継ぎ・面談
薬剤師内服・投薬管理(必要時)投薬のタイミング、母乳との関係など
臨床心理士家族の心理的支援(必要時)育児ストレス、母親の産後メンタル支援など
臨床工学技士(ME)医療機器の調整・管理在宅酸素・モニターの設定や使用方法の確認
事務職・地域連携担当退院調整、書類対応医療証・在宅サービス申請等の支援

大切なのは看護師が“気づきの窓”になり、他職種が気づきにくい家族の悩みを伝えていきます。

連携は“チームで赤ちゃんと家族を支える”意識で行うことが大切です

GCUとNICUの違い

新生児の手

GCUとNICUでは、看護のアプローチが大きく異なります。

項目NICUGCU
対象急性期、重症新生児回復期、退院準備段階
看護の目的生命の維持・集中治療発育支援・生活への移行
ケアの特徴高度医療中心(人工呼吸、点滴など)哺乳・体重管理・育児指導
家族の関わり制限されることも多い関与が多く、指導機会豊富

NICUでは生命の維持が中心になりますが、GCUでは発育支援や生活への移行が大切になります。

そのため、育児指導という観点ではGCUが中心に行うことになります。

GCUで働いて感じたことは、生活を支える看護に近いということ。家族との距離がぐっと近くなる分、コミュニケーション力が重要になります。

GCU看護師に求められる力とは

新生児の手

GCU看護に必要なスキルは以下になります。

GCU看護師に求められる力
  • 観察力:小さな変化にも敏感に対応する力
  • 育児支援スキル:実際の育児をサポートする指導力
  • コミュニケーション力:不安を抱える家族に寄り添う対話力
  • 多職種連携力:医療と福祉の橋渡しができる調整力

私も最初は、医療的ケアよりも「どう家族に説明したら伝わるか」のほうが難しく感じました。ですが、経験を重ねるうちに、家族の表情や言葉から“本音”を汲み取る力が自然と身についていきました。

実際に働いてみて感じたGCU看護の魅力

新生児の手

赤ちゃんの「成長」を間近で見守れる喜び

GCUでは、NICUを経て回復期に入った赤ちゃんたちが、少しずつ哺乳が安定し、体重が増え、退院に向けて順調に育っていく様子を見守ることができます。

NICUでは急性期の緊張感が強く、命を守るケアが中心でしたが、GCUでは「育つ過程」に寄り添えるのが最大の魅力です。

小さく生まれた赤ちゃんが、少しずつ大きくなり、ミルクを飲むことで体重が増えた日には、自分のことのように嬉しくてたまらなかったのを覚えています。

命の「はじまり」に立ち会える尊さ

GCUでは、時に出産直後の新生児の受け入れに関わることもあります。また帝王切開時に立ち会うこともありました。その瞬間は、まさに命の誕生に立ち会うという特別な体験です。

新しい命を胸に抱き、カンガールケアを行い、涙を流すお母さんの姿を見たとき、その場に一緒にいられること自体が、この仕事の尊さを教えてくれます。

看護師として働いていく中で、新しい命が誕生する瞬間に立ち会えたことに感動しました。何よりも赤ちゃんの成長を日々見守れる喜びが大きかったです。

家族の「成長」に寄り添える

赤ちゃんだけでなく、ご家族の成長を見守れるのもGCU看護の魅力です。

最初はおそるおそる抱っこを行っていたお母さんも、授乳を繰り返す打ちに手つきがスムーズになる姿を見ると嬉しくなりました。

家族が「親になる」過程をそばで支えることができるのは、GCUならではのやりがいです。

チームで支える達成感

GCUでは医師、保育士、MSW、栄養士など多くの職種と連携します。
みんなで一人の赤ちゃんと家族を支えることに、一体感と達成感があります。

カンファレンスで「ここまで来たね」と共有できたときの、チームで命を育てている感覚が、他の分野では味わえない魅力だと感じます。

長く関わるからこそ築ける信頼関係

GCUはNICUよりも滞在期間が長く、1週間~数ヶ月と関わることもあります。
長期にわたり同じご家族と接することもあります。

退院時に「ここまで来られて本当に良かったです」と言われたときの感動は、今でも忘れられません。

実際に働いてみて感じたGCU看護の大変なこと

新生児の足

家族支援の難しさ

GCUでは赤ちゃんへのケアだけでなく、ご家族への支援や育児指導も重要な役割です。とくに初めての育児で不安を抱えている保護者との関わりでは、どこまで踏み込むべきか、どんな言葉が相手を安心させるかを常に考え続ける必要があります。

「私のせいで小さく産んでしまった」と涙を流すお母さんに、どんな声をかけたらよかったのか。何度も悩み、ときに自分の無力さを感じることもありました。

看護技術以上に、「寄り添う力」や「傾聴する姿勢」が求められることを、改めて実感しました。

退院に向けた“プレッシャー”

医療者としては「退院=ゴール」に感じがちですが、家族は退院がスタートであり、不安のピークでもあります。

こちらが「もう大丈夫」と判断していても、家族の気持ちが追いついていないことが多く、「本当に帰って大丈夫ですか?」と聞かれることもありました。

“準備万端”の基準が、医療側と家族側で違うというギャップに悩むことがあります。だからこそ家族に寄り添い、何が不安なのか一つ一つ確認して解消していく必要があります。

夜勤の大変さ:静かながらも気を抜けない時間帯

GCUの夜勤はNICUほどの緊急度は少ないといわれがちですが、決して楽ではありません。

夜間はスタッフが少ないため、一人で複数の赤ちゃんの観察やケアを担当します。医師も不在の場合が多く、何かおかしいかも?」という感覚に頼って判断し、対応を始めることもあります。

夜間の哺乳中の嘔吐やチアノーゼなどを対応し、落ち着いたらほっとしたものの、責任の重さに緊張が続いた夜でした。

また、夜間でもミルク・オムツ交換・吸引などは継続して必要なので、赤ちゃんのリズムに合わせて動き続ける体力と集中力が求められます。

医療的ケア児の対応:看護技術と家族支援の両立

GCUでは、在宅医療につながる医療的ケア児(医ケア児)の入院も増えています。
よく見られる医療的ケアとして

  • 経管栄養(鼻チューブや胃ろう)
  • 在宅酸素療法
  • 吸引(口腔・鼻腔・気管切開)

看護師として、ケアそのものの正確さだけでなく、「家族が自宅で同じことを再現できるように支援する力」が求められます。

お母さんに吸引の練習をしてもらう歳には、その時は焦らず繰り返し練習し、一歩ずつできるようになっていく姿を見守る覚悟が大切だと感じました。

また、医療的ケア児は感染リスクも高く、環境管理や清潔操作にも細心の注意が必要です。技術的なスキルと心理的サポートを同時に求められる難しさがここにあります。

GCU看護師になるには?

新生児の足

GCU看護師になるルートは以下の通りです。

  • 新生児医療に興味があると希望して配属される
  • NICUや産科、小児科からの異動
  • 中途採用・転職で新たにチャレンジする

現在GCUがない病院も多くあります。新生児看護に興味があるならば、病院選びも大切になります。

私は内科や外科を経験後にGCUに配属になり、今までとの違いに大きく戸惑いました。しかし、先輩の手厚い指導や勉強会のおかげで徐々にスキルを身につけることができました。

未経験でも意欲と学ぶ姿勢があれば十分やっていけます。

まとめ:GCU看護は赤ちゃんと家族の架け橋

まとめ

GCU看護は、NICUから退院までの大切な橋渡しを担う存在です。
医療的な管理だけでなく、赤ちゃんの成長や家族の気持ちに寄り添いながら「家庭での生活に向けた準備」を支えることが、私たちGCU看護師の大きな役割だと感じています。

NICUのような緊張感こそ少ないかもしれませんが、その分、一人ひとりの赤ちゃんとじっくり向き合い、家族と信頼関係を築きながら退院というゴールに導く喜びがあります。

実際に働いてみて感じたのは、「この仕事にしか味わえない感動」がたくさんあるということ。
これからGCUで働きたいと考えている方や、新生児看護に関心のある方には、ぜひこの魅力ある現場での経験をおすすめしたいです。

非常に分りやすい説明と図で理解が深まります。家族用と医療従事者用で項目が分かれているので、家族への説明にも便利です。